看護師が自宅に来てくれる訪問看護と言う医療サービスには、医療保険(健康保険のこと)も介護保険も適用されます。
介護保険の要介護認定を受けている人は、原則として介護保険の訪問看護サービスを利用することになります。
でも、「毎月、訪問看護は介護保険の請求だったのに、先月は医療保険の請求も混じっている」なんてことも、時には起こります。
要介護認定を受けている人の訪問看護が、介護保険だったり医療保険だったり混在するのはどうしてでしょう?

要介護認定を受けていても、訪問看護が医療保険になる場合とは?
介護保険の要介護認定を受けている人は、原則として訪問介護は介護保険のを利用します。
それでも、訪問看護が医療保険になることがあります。
次の2つのどちらかに該当したときには、介護保険の要介護認定を受けている人でも、医療保険の訪問看護を利用します。
「自分は断固として、介護保険の訪問看護を利用したい!」と主張しても、医療保険になります。
でも、介護保険から医療保険に変わったからといって、訪問看護の事業所が変わると言うことはありません。
家に来るのは、いつもの訪問看護師さんですから、そこは心配無用です。
介護保険の要介護認定を受けている人でも、
訪問看護が医療保険になる場合
- 特掲診療料の施設基準等別表第7に掲げる疾病等 の疾病の患者の場合
- 特別訪問看護指示が主治医から出た場合(有効期間は14日間)
上記の①②が、どう言う状態なのかと簡単に言うと、「ちょっと大変なとき」です。
まず、①の特掲診療料の施設基準等別表第7に掲げる疾病等(とっけいしんりょうりょうのしせつきじゅんとうべっぴょうだいななにかかげるしっぺいとう)の一覧をご覧いただくとわかるのですが、末期がんや筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、かなり重度の病気です。
そして、②の特別訪問看護指示(とくべつほうもんかんごしじ)とは、患者さんにいつも以上に手厚い看護が必要な状況だと主治医が判断した時に出される指示です。
例えば、床ずれ(褥瘡)ができたので看護師が毎日訪問して、治療をする必要があるとか、毎日点滴しなければならなくなったので、看護師が毎日訪問する必要があるといったような場合です。
この特別訪問看護指示は、一人の患者に対して1ヶ月に1回だけ出せるものですが、褥瘡や気管カニューレを装着した患者さんの場合は月2回まで出せます。
「いつも訪問看護は介護保険の請求になるのに、医療保険からの請求も混じっている」と言う場合は、②の特別訪問看護指示が出たと考えられます。
なぜ、わざわざ医療保険に変わるのでしょう
なぜ、訪問看護は介護保険だったり、医療保険だったりするのでしょう。
それは、手厚い看護が必要な患者さんには、必要なだけ訪問看護が利用できるように・・・と言う理由からだと思います。
先ほども書きましたが、訪問看護が医療保険になるのは、「ちょっと大変な状態」の場合です。
「ちょっと大変な状態」とは、訪問看護をたくさん利用しなければならない状態なのです。
しかし、介護保険は、要支援や要介護の度合いによって、利用できるサービス量の上限が決まっています。

急に頻回な訪問看護が必要になったからと訪問看護のサービスをケアプランに入れたら、それだけで利用できる限度額がいっぱいになってしまって、デイサービスや訪問介護などの他のサービスが利用できなくなってしまうかもしれません。
限度額いっぱいに訪問看護を利用しても足りず、足らない分を実費で負担する・・・なんて事態になるかもしれません。
なので、医療保険の訪問看護に切り替わるのですが、これが単に医療保険に切り替わるだけんじゃないんですよ!
医療保険の訪問看護のリミッター解除?
介護保険の要介護認定を受けていない人が訪問看護を利用する場合は、医療保険一択です。
介護保険の第2号被保険者ではない39歳以下の人は、どんな疾病や障害であっても医療保険の訪問看護を利用することになります。
医療保険の訪問看護には、利用の原則があります。
訪問看護を利用する患者は、1週間に3日まで、1日1回まで、1カ所の訪問看護ステーションのみ利用できると言うものです。
医療保険の訪問看護の利用原則
- 1週間に3日しか利用できない
- 1日1回しか利用できない
- 1カ所の訪問看護ステーションしか利用できない
しかし、①の特掲診療料の施設基準等別表第7に掲げる疾病等と特別訪問看護指示の期間は、この制限、リミッターが解除されるのです!
介護保険の要介護認定を受けている人でも、
訪問看護が医療保険になる場合
- 特掲診療料の施設基準等別表第7に掲げる疾病等 の疾病の患者の場合
- 特別訪問看護指示が主治医から出た場合(有効期間は14日間)
①と②に該当したら、医療保険の訪問看護のリミッターが外れるねんで〜!
よう覚えときや〜!
- 毎日の訪問が必要であれば、週4日以上訪問看護が可能!
- 1日に2回以上の訪問看護が可能!
- ①の場合は3カ所の訪問看護ステーションが、②の場合は2カ所の訪問看護ステーションが利用できる!
39歳以下の人も①や②に該当した時は、医療保険の訪問看護のリミッターが解除されます。
利用できる訪問看護ステーションの数が増えたら、なんかええことあるんかいな?
毎日の訪問や1日に何回もの訪問となると、1つの訪問看護ステーションでは人員が足りない場合もでてきます。
そのために2カ所目、3カ所目が利用できると安心なんですよ

費用的にはメリット・デメリットがある
費用的には、医療保険の訪問看護の方が若干高いようです。
しかし、①の特掲診療料の施設基準等別表第7に掲げる疾病等に該当する患者さんの場合は、身体障害者手帳を持っている場合も多いと思います。
障害者手帳1級・2級をお持ちの方なら、重度心身障害者医療費助成制度が適用され、医療費がかかりません(費用負担は自治体によって異なります)。
介護保険の訪問看護は1割負担(所得によっては2割・3割負担)ですが、医療保険の訪問看護では費用負担がなくなり、経済的に楽になる人もいます。
しかし、70歳未満の人は医療保険(健康保険)の自己負担が3割です。
40歳〜64歳の介護保険の第2号被保険者で要介護認定がでている人の場合は、介護保険の訪問看護だと1割負担なのに、医療保険になった途端に3割になる!と言うこともありますので注意が必要です。

